定期課金型のビジネスモデルは、その大小を問わず、経営者から熱い視線が注がれています。
長期にわたり安定した収入が得られることから、一定数のユーザーが存在するだけで経営状況は大きく変わってきます。
とはいえ、必ずしも全ての業種に取り入れられるわけではなく、小売業のような1つの商品を販売して関係が一度終了する業種は、取り入れるのが難しい一面もありました。
しかし、最近では様々な業界が定期課金型のビジネスモデルを構築し、成功事例を積み重ねているケースも見受けられるようになりました。
この記事では、かつては定期課金システムを導入するのは難しいと考えられてきた、各種業界の成功事例をご紹介します。
様々な業界で取り入れられている定期課金の仕組み
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定期課金システムは、毎月決まった金額をユーザーから徴収する仕組みです。
そのため、同じ商品を毎月定量販売したり、施設を決まった期間使用できる権利を提供するなど、固定的なサービスと相性が良いビジネスモデルとされてきました。
しかし、インターネット環境が整うにつれて、消費者の希望も幅広くなってきました。
一人ひとりの嗜好も変わり、一律のサービスでは消費者が満足しなくなってきたのです。
今までのビジネスモデルが通用しなくなった反面、自らのビジネスモデルには無い要素を取り入れることで、他社と差をつけることに成功した企業も数多く存在します。
ここでは、定期課金を新たに導入し、成功した事例をご紹介していきます。
食品取り扱いでも成功例あり!
食品を取り扱う会社は、基本的に1回の買い物ごとの関係になります。
もしも「月額5,000円で野菜買い放題!」となったら消費者の熱視線を集めるでしょうが、あまり現実的ではありません。
食品の相場は気候などの条件によって変動するため、一律の値段はつけにくいところがあります。
しかし、店舗で購入する権利を年会費として徴収し、利益を生み出している企業があります。
それが【コストコ】です。
ブランド商品も含めた高品質商品を、低価格で大量に仕入れられるとあって、日本でも多くのユーザーを抱えています。
オフィス備品などを揃えるのに使用している企業も少なくありません。
なぜ、安価な値段を実現できたのでしょうか。
その答えが「会員制」です。
コストコでは、法人用・個人用それぞれのカードを用意しています。
法人用は個人用に比べて費用が安く抑えられており、個人事業主・自営業者でも加入が可能です。
年会費は法人用が3,850円(税別)、個人用が4,400円(税別)となります。
年会費を毎年徴収することによって、商品自体の値段が安くなるように設定しているのです。
この会員制ビジネスによる売上は、2014年8月期の業績指標において、約2,900億円となっています。
売上高に対する原価率がほぼ9割であり、販管費を含めると営業利益はほとんど残りません。
そのため、コストコの利益を支えているのは他ならぬ「年会費」なのです。
こちらはアメリカの企業になりますが、日本でも定期課金の要素を取り入れた食品販売のビジネスモデルが存在します。
ご存知の方もいるかもしれませんが、【やっちゃば倶楽部】という会員制宅配サービスです。
やっちゃば倶楽部は、全国各地の生産者から、様々な食材を購入できるのが売りです。
ユーザーと生産者を繋ぐのは「食材カタログ」です。
会員に登録することで、全国各地こだわりの逸品が載っている、魚・野菜・果物・肉といった商品のカタログを自宅に届けてくれます。
会費は月額810円(税込)で、カタログを届けるだけの条件にしては強気の値段設定ですが、その品質の高さから本物志向のファンを増やしています。
化粧品販売はクーポンがおトク感を高める
化粧品業界においては、インターネット上での購入が必要な場合、会員登録を推奨している会社がほとんどです。
ただし、すべての会社が有料会員化をユーザーに求めているわけではありません。
会員向けの商品案内や、ネットだけで購入できる商品の情報などを、原則無料での会員登録によって囲い込んだユーザーに宣伝しています。
無料会員・有料会員の枠を設け、差別化を図っている会社もあります。
メンバー登録自体は無料で可能ですが、その先のクラスとなるコースを準備し、ユーザーの使用頻度に応じておトクになる会員制度を設けています。
限定クーポンの発行や、買い物後のポイント還元率が3%になるなど、ユーザーの気を引くサービスを提供しています。
受験戦争にもネットの恩恵が
インターネット環境が進化していくことで、受験戦争においてもネットの恩恵が受けられるようになりました。
家庭教師を付けずに、自宅にいながら受験対策を講じることが可能になったのです。
社会人向けのプランとして、英会話学習に焦点を置いているものもあります。
期限付きではありますが、一週間お試し無料のプランも用意されています。
有料会員になることで、実際に講師が行っている講義を自宅で見ながら勉強ができます。
金額もベーシックプランであれば塾の月謝に比べてはるかに安く済みます。
また、難関大学への合格を考えている場合などは、より攻めたプランへの移行も可能です。
自分専用の学習プランを組んでくれたりと、かなりハイレベルなサービスが受けられます。
あまりにもメジャーで気にしていないが、携帯電話代も定期課金の一種
普段身近過ぎて頭に浮かばないことが多いですが、普段使用している携帯電話代も、定期課金の性格を持っています。
毎月お金を支払わなければ、通話ができないわけですから、当然定期課金の成功事例ではあります。
かつては大手キャリアがパイの奪い合いをしていましたが、格安SIMの出現により、様々が会社がモバイル業界に参入しました。
そのため、必ずしも大手が市場を独占できる状況ではなくなってきています。
大手量販店に行って携帯電話コーナーを見た方はご存知かと思いますが、大手が陣取る一角に、格安SIMコーナーが設けられています。
イオンなどは流通大手ということもあり、格安SIMに加えて、自社調達した中国産の携帯電話などをセットにして販売しています。
電話は現代人の必需品ということもあり、値段設定で有利な格安SIMは、新たな潮流を生み出しています。
身近に感じられるかもしれない、定期課金の成功例
ここまで、会員の囲い込み体制が大規模なものや、定期課金に向いたビジネスモデルについて、成功例をご紹介してきました。
しかし、比較的身近に感じられる距離感の定期課金サービスも存在しています。
ここからは、日常生活に即したニーズを満たす、定期課金の成功例をご紹介します。
レンタルし放題!パーティー用のドレスを貸し出すサービス
結婚式や成人式など、冠婚に関わるイベントは華やかで楽しいものです。
しかし、時として悩みの種となるのが衣装です。
ドレスが必要な場合、アウトレットモールなどで安く購入することを考える方も多いと思いますが、人によってはなかなか着る機会が無いこともあります。
そうなると、クローゼットに無駄な衣類が溜まる一因にもなります。
そのような不便に応えて誕生したのが、パーティー用のドレス貸し出しサービスです。
基本的に単品ごとのレンタルサービスですが、有料会員になることで、月に4枚のドレスをレンタルできるようになります。
海外ではホームパーティーを開くことが多いため、日本以上に着るものの悩みは多いようです。
もちろん日本人であっても、交友関係が広ければ、それだけオシャレには気を配らなければなりませんから、幅広いドレスを選べるのは嬉しいサービスと言えます。
コーディネートも担当者におまかせ!男性の普段着を貸し出すサービス
女性向けのサービスだけでなく、男性向けの衣類レンタルサービスもあります。
こちらはパーティー用ではなく、普段着のサービスです。
男性の方は少なからず心当たりがあるかと思いますが、オシャレに敏感な方がいる一方で、服装に関してまったく無頓着という方も一定数存在します。
基本的なコーディネートを決めたら、あとは季節に応じて着回すだけというスタイルです。
生活する分には支障はありませんが、異性の目を掴むのは難しいかもしれません。
そんな方向けのサービスが、月額固定で服をレンタルできるサービスです。
このサービスには、事前に好みの服についてカウンセリングを行い、担当者がレンタルする服をコーディネートしてくれるという特徴があります。
レンタルした商品を気に入った場合、購入することも可能です。
店頭価格よりも安い値段で買える商品もあるため、お値段が気になる方でも安心です。
プロの目線でコーディネートされていることもあり、いつもとは違う自分を発見できるきっかけにもなります。
コーディネートの種類は月1で2種類ということもあり、よそ行きの服として使うには十分なスペックです。
女性ならではのお悩みに特化した定期課金サービス
女性は男性に比べて、結婚・妊娠・出産・子育てといった、ライフステージによる環境の変化に悩まされる場面が多いです。
そのため、体調管理を男性以上に行う必要性に迫られる場合があります。
特にシビアなのは妊活です。
排卵日や生理日をある程度しっかりと予測しなければならず、夫婦共働きの場合は仕事のスケジュールも勘案する必要があります。
とはいえ、不規則な生活になってくると、なかなかそこまで気が回らないのが実情です。
そのような女性特有の悩みから生まれたのが、生理予定日をメインに据えたアプリを提供するサービスです。
生理予定日を管理することで排卵日を予測し、周期に合わせたダイエット・美容情報を確認することもできます。
体温管理やお薬手帳の機能も備えており、自分の身体の状態を可視化しやすいのが特徴です。
そこまでする!?カミソリの替え刃サービス
女性ほど大変なことではありませんが、男性にも一種の生理現象があります。
それは「ヒゲ」です。
ヒゲ剃りの悩みを持つ方は意外と多く、人によってはヒゲがあまりにも濃いため、電気カミソリでは剃れないという方もいます。
そこで替え刃を購入するわけですが、替え刃は購入すると意外とお金がかかります。
高品質のものになると、8枚入りで3,000円近くの出費を余儀なくされます。
サラリーマンであれば、毎日ヒゲを剃るのが基本でしょうから、収入によっては家計を圧迫する一因にもなりかねません。
そんなカミソリ市場にエッジの効いた新サービスが現れました。
替え刃を定期購入の形にして、大手よりも安く販売するビジネスモデルです。
このモデルの恐ろしいところは、ヒゲ剃りだけではヒゲは剃れないことを、しっかりと認識したうえでサービスを提供している点です。
シェービングクリームや保湿クリームといった、ヒゲを剃るにあたって必要な他の商品もしっかり用意しています。
当然、ヒゲ剃りと一緒に購入したほうがおトクと考え、こちらも継続利用が期待できるというわけです。
おわりに
今回は、定期課金のビジネスモデルにおける、成功例にフォーカスしてご紹介してきました。
大手による販売戦略だけでなく、ニッチ市場においても定期課金を導入できる好例は数多くあります。
衣・食・住に関係するジャンルについては、人間である以上、ある程度悩みの種は似通っている部分があります。
問題は、その悩みに対して、どのような解決策を提示できるのかという点です。
地域性によって変わる悩み、性別特有の悩み、金銭面での悩み……。
人の数だけ悩みは存在しますが、それに対する解決方法は、その悩みの深さによって変わってきます。
かつては何でも「所有」しなければならないという概念があり、それがビジネスモデルを構築するうえで、思考の壁として立ちふさがりました。
しかし、「共有」を意識し始めることで、必ずしも所有する必要が無いものに新たに気付けるきっかけが増え、日常に即した定期課金ビジネスモデルの成功例につながりました。
今後も、定期課金を導入できるビジネスモデルは、日々増え続けていくことでしょう。