経営者にとって毎月固定で入金される売上は魅力的に感じられますが、自分が取り扱っているビジネスモデルが必ずしも定期課金には馴染まない場合があります。
そんな時は、他社のビジネスモデルを真似て展開してみると意外と上手く行ったりするものです。
ここでは、どのようなビジネスモデルが定期課金に向いているのかや、現在自分が持つビジネスへの応用例をご紹介します。
定期課金に向いている業種は、こんな業種
定期課金のシステムを取り入れ、顧客の利便性を高めつつ運営者側も得をするタイプのビジネスモデルはたくさん存在します。
以下に詳細をご紹介していきます。
スポーツジムなど、施設の利用権を提供するサービス
スポーツジムやフィットネススタジオなど、施設を定期的に利用できる権利を提供するサービスは、定期課金に向いています。
お客さまがそれぞれのタイミングで自由に施設を行き来でき、長期に渡り利用することが見込めますから、1回1回入場料を支払う形にするよりも効率的です。
また、意外かもしれませんが、スポーツジムにおける売上の7割が空払いという、衝撃的な事実があります。
会員になった段階で多くの会員が達成感を味わい、本来の目的であるダイエットに取り組めないという、本末転倒な理由です。
これは経営者側としては不本意ではありますが、メリットの1つでもあります。
契約内容によっては、最低半年は会員として籍を置く必要がある契約もあるため、会員になった最初のうちは真剣に通う方がほとんどです。
しかし、元を取ろうとする義務感だけでは、なかなか長続きしません。
結果的に退会手続きをするのが面倒になり、形だけの会員となって存在しているのです。
このような理由から、全体で考えると使用者から1回あたりの入館料をもらうよりも、多くの収入が見込めます。
ただし、長期的には何らかの形で施設に足を運んでもらえるよう手を打たなければ、最終的には解約率は上昇するでしょう。
また、魅力的な器具やプログラムを用意しなければ、固定費に対する売上がおぼつかなくなるリスクもあります。
エステ・脱毛サロンなど、定期的に行う必要性の高いサービス
女性にとって美しくあることは永遠のテーマの1つです。
常に自分を磨きたいという意識の高い女性は決して少なくなく、特に婚活市場においては、自分自身をいかに美しく見せるかに腐心している方も見受けられます。
そんな美しさにこだわる彼女たちにとっても、エステや脱毛サロン選びは悩みの種です。
全身脱毛など、長期にわたり施術が必要な場合、1回あたりの費用が馬鹿になりません。
そこで重要なのが、必要な時に必要な箇所の施術を受けられるサービスです。
エステ・脱毛サロンの特徴として、サービスを受ける回数に応じた回数制や、満足いくまでサービスを受けられる回数無制限の料金体系があります。
回数無制限とは言いつつも、期間や部位があらかじめ決まっている契約もあります。
一見、サービスを受ける側にとってはメリットが大きそうですが、その分金額もかなりのものでした。
そこで最近注目を集めているのが「月額制」です。
広範囲の脱毛やマッサージを希望し、なおかつ毎月サービスを受けられる時間的余裕がある方に適しています。
1回あたりの施術に関しては制限がある場合が多いですが、パーツごとに気になる部位から施術を行うことも可能になり、金額も一度に支払うよりもお手頃になります。
サロンによって商品の内容や金額設定にバラつきはありますが、1回あたりの施術料をためらうユーザーを取り込みやすくなります。
また、プランによっては3年にわたり継続して入金が見込めるため、運営者側から見ても魅力的な決済方法です。
健康食品・化粧品など、決まった期間飲用が必要な商品販売サービス
健康食品や化粧品は、一度購入すると同じものを長期的に摂取・使用する傾向が強い製品です。
ダイエット目的の健康食品などは「半年で-5kg減少しました!」などと口コミなどでうたわれている製品もあり、ユーザーとしても継続して購入したいという気持ちを刺激されます。
そのため、商品の質をユーザーが信頼すれば、同じユーザーから10年以上も安定した収入を得られる可能性があります。
まずはお試し価格で1ヶ月分の商品を提供し、その後は定価よりも安めの価格設定で販売するようなプラン設定も可能です。
同じ商品であっても、購入者の属性に応じてプランを変えることができます。
健康食品などに限らず、現在何らかの商品を販売している場合は、固定ユーザーを得る意味でも定期課金を導入するメリットはあります。
化粧品についてはより細かな期間設定が可能です。
同量であっても使う量や肌状態は個々人で異なるため、30~90日までといった一定のスパンの中から、次回の購入期間を決めているケースも見られます。
購入の度に、通常購入よりもお得な金額で購入できる設定となっています。
塾の月謝・メルマガ情報商材など、知識の提供を長期間行うサービス
毎日もしくは毎月、ユーザーにとって有益な知識・情報を提供するサービスを取り扱っている場合も、定期課金と相性が良いビジネスモデルです。
受験に関わる情報は年々移り変わり、使用する教科書の内容によっても指導内容が変わります。
生徒の学力や志望校によってもコースは変わりますから、数多くのコースを用意する場合は、定期課金のシステムを導入した方が資金管理がスムーズです。
メルマガ配信などによる情報商材の販売や、何らかのノウハウ提供などを行う場合も、定期課金ビジネスには馴染みます。
基本的にどのようなジャンルであっても、最新の情報というのは日々変化しています。
アフィリエイト手法なども、基本的な考え方は変わりませんが、実際に収入を得る手法は数多く紹介されています。
これらの知識量によって収入が決まるケースは少なからず存在し、そのため有力な情報商材であれば、継続的に購入を考える方も多いでしょう。
また、情報商材の場合はネット上だけでのやり取りになることも少なくないため、継続課金システムを導入したとしても、そのほかのランニングコストを抑えられます。
アイデア次第では、どんなビジネスでも定期課金につなげられる!
ここまで、定期課金に向いているビジネスモデルをご紹介してきました。
しかし、一見すると定期課金には向かないビジネスモデルでも、取り組み方次第では導入が可能なジャンルがあります。
現に、多くの企業がこの定額サービスモデルへ面白いサービスを投入してきています。
従来は「一家に一台」の代表だった車なども、リースやカーシェアリングといった、必要に応じて利用するタイプのビジネスモデルへと変容を始めています。
金額設定も顧客の需要と実際の使用料によって計算されるようになるため、ユーザーとしては安価にモノを使用できたり、サービスを受けられる恩恵があります。
会社側も、顧客とのやり取りを増やすことで、思いもよらないビジネスチャンスを生み出せる可能性が出てきました。
以下に、継続課金には馴染まないタイプのビジネスモデルについて、発想の転換で継続課金を取り入れた好例をご紹介します。
ヘアサロンにおける、カラーリングの継続課金例
基本的に髪の毛を染める行為というのは、その1回で効果が完了する施術になりますから、一見すると継続課金には馴染まないビジネスモデルです。
しかし、ヘアカラーの頻度はその目的によって異なります。
この点に着目し、カラーリングに継続課金の概念を取り入れて成功した美容院があります。
ヘアカラーの適切な頻度としては、髪のダメージを勘案し、2ヶ月に1度の頻度で行うのが理想的とされています。
しかし、染めた色の明るさによっては、色をきれいに保つために1ヶ月に1度の頻度で行った方がよい場合があります。
白髪の場合はさらに顕著で、3週間に1度ほどのスパンにしなければ、すぐに目立ち始めます。
理想的なスパンはユーザーによって千差万別であることに目を付け、思い切ってカラーリングの値段を月額制にしたところ、カラーリングのついでにカットを依頼されるケースが増えたそうです。
カラーリングを月額課金にしているため、それとは別枠でユーザーがサービスを考えてくれるという、潜在的なメリットがあったというわけです。
もちろん、月々の料金は少し割安の価格設定になっています。
カフェにおける、いつ来てもドリンクが飲める継続課金例
ドリンクバーと言えば、レストランなどで料理を注文した際、ついでに頼むサービスの代表格です。
料理とセットで注文する場合、概ね200~300円台の価格設定です。
このドリンクバーにあたるサービスを、月額5,800円で飲み放題にするという画期的なカフェがあります。
こちらのカフェでは、9種類のドリンク(コーヒー・紅茶など)については、1杯400円程度の価格帯で販売されています。
よって、15杯以上飲む場合は、月額5,800円を支払った方が得です。
ここでもやはり、月額で支払う分とは別にスイーツなどを注文する可能性が高くなりますから、結果的に売上増が期待できます。
1杯あたりの価格が高い別ブランドのコーヒーカフェと比較して考えた際、お財布の中身を考えずに通勤途中で美味しいコーヒーを飲めるのは、ユーザーにとってもありがたいものです。
手元にお金が無くともコーヒーが飲めることから、昼食が弁当の方でも、カフェで本格的なコーヒーを飲みながら気兼ねなく食べられます。
わがままなユーザーに応えた提案の1つと言えるでしょう。
子供服販売における、子供服やおむつを定期的に送る継続課金例
子供は成長が早く、その成長度合いに伴い、身に着ける衣類も移り変わっていきます。
その点にフォーカスし、月額費用を支払えば、1年間にわたって服が送られてくるというサービスがあります。
年齢・身長ごとにサイズ分けされており、それらの中から好きなものを選べます。
乳児用のおむつ、お尻拭きを定期的に送ってくれるサービスもあります。
買いだめしようとすると結構な量になりますが、時期を見て送ってくれるのでかさばりません。
衣服・おむつともに、ギフトとしても贈れます。
おもちゃ屋における、おもちゃをレンタルする継続課金例
こちらも子供向けで、子供の気持ちの移り変わりに視点を当てたサービスになります。
子供のおもちゃは年齢によって好みが変わり、買えば買っただけどんどん場所を取っていきます。
その点レンタルであればその時の気分に応じておもちゃを選べますから、返却すれば場所を取りません。
子供用品はおもちゃに限らず、一時的なニーズを満たすものなので、必要なタイミングに応じて借りられるレンタルグッズとは相性が良いと言えます。
所有することなく、必要に応じて利用できるサービスは、これからどんどん増えることが予想されます。
タイヤ販売における、走行距離によりタイヤを交換する課金例
継続課金という面では少しニュアンスが異なりますが、新しい試みとして、走行距離に応じてタイヤを交換するというビジネスモデルがあります。
今までは、タイヤと言えば車同様、所有物であるという認識がありました。
しかし、タイヤにセンサーを取り付け、走行量に応じて使用する課金スタイルが可能になったことで、タイヤは必ずしも一度に購入する必要が無い商品になりました。
タイヤも実際に購入するとなると結構な出費になりますから、この手法が導入されることで、購入のハードルが下がります。
センサーによって走行距離を確認するため、得られたデータから利用実態を把握した、新たなサービス開発につながる可能性も期待されています。
おわりに
かつてのビジネスモデルにおいて、マーケティングの重心となっていたものは「販売」でした。
より多くの商品を購入してもらうために、商品の存在を認知してもらい、売上向上につなげていくという考え方です。
しかし、定期課金を前提としたビジネスモデルの場合、その重心は「繋がり」へと移行します。
ユーザーの実際の生活に根付いたサービス・商品を継続的に利用してもらい、信頼関係を築き、長いお付き合いへと進んでいくことが目的となるのです。
冷静に考えてみると、ユーザーとの良い関係を築くこと自体は、どちらのビジネスモデルにも必須ではあります。
しかし、顧客との距離が近いのは、明らかに後者です。
定期課金に向いているビジネスモデルは確かに存在します。
しかし、少し目線をユーザーに寄せてみると、思わぬ形で既存のビジネスモデルに応用できることができることが分かります。
もし新しく定期課金ビジネスを始める場合は、自分自身が持つ既存のビジネスモデルに応用できないかどうか、一度考えてみる価値はあるでしょう。