AI駆動開発の費用はいくら?これまでの人月見積もりと比べて安くなる工程・ならない工程と、作った後の払い方【2026年版】
生成AIを使ってシステムを作る「AI駆動開発」が広がり、「開発費が大きく下がった」という話をよく聞くようになりました。実際、これまでより安く作れるようになったのは本当です。
ただし、開発のすべての工程が同じだけ安くなったわけではありません。大きく縮んだ工程と、ほとんど縮まない工程があります。そしてもうひとつ、システムは作って終わりではありません。作った後にも、直す・育てる・守る費用がかかり続けます。
この記事では、これまでの開発費を上流から下流までのエンジニアの人数と期間で分解し、AI駆動開発で何が変わったのかを整理します。あわせて、最初の開発費をまとめて出しにくい場合の払い方として、長期のラボ契約で按分するという考え方も紹介します。
AI駆動開発の費用は安くなる?結論:安くなるのは「作る工程」
AI駆動開発とは、設計に沿ったコードの作成やテストの準備などに生成AIを使い、人は「何を作るか決める」「出来たものを確かめる」ことに力を使う開発の進め方です。
費用の面で起きていることを一言でいうと、コーディング(実装)にほとんど時間がかからなくなったということです。一方で、何を作るかを決める要件定義や、どう作るかを決める設計は、AIを使ってもあまり縮みません。お客さまと話して決める工程だからです。
AIで作るなら、開発費は何分の1にもなるんでしょ?

「全体が何分の1」にはなりにくい、というのが実感です。どこが縮んで、どこが残るのかを、これまでの見積もりの中身から見ていきます。
これまでの開発費の中身:工程 × 人数 × 期間(人月)で決まっていた
これまでのシステム開発の見積もりは、「どの工程に、どんな人が、何人、何か月」かかるかを積み上げて出すのが一般的でした。1人が1か月働く量を「1人月(にんげつ)」と呼び、人月 × 人月単価で費用を出します。
工程ごとに担当する人と、人月単価の目安は次のとおりです。
| 工程 | 担当する人 | 主に何をするか | 人月単価の目安 |
|---|---|---|---|
| 企画・構想・業務整理 | ITコンサルタント | 課題を整理し、何をシステム化するか、そもそも開発するべきかを決める | 130〜210万円 |
| 要件定義・技術方針の決定 | 上流SE・ITアーキテクト | 必要な機能・業務ルールを整理し、システム構成や技術を選ぶ | 110〜170万円 |
| 基本設計・詳細設計 | SE/設計担当 | 画面、データベース、API、処理内容を具体的な仕様にする | 80〜120万円 |
| 実装・単体テスト | プログラマー/開発エンジニア | 仕様をもとにコードを書き、機能単位で動作を確認する | 60〜100万円 |
| テスト設計・品質確認 | QAエンジニア/テスト設計担当 | 確認項目を設計し、不具合の管理や品質確認を行う | 50〜80万円 |
| テスト実行 | テスター | テスト項目に沿って操作し、結果・不具合を記録する | 50〜70万円 |
工程をまたいで関わる人もいます。
| 担当する人 | 主に何をするか | 人月単価の目安 |
|---|---|---|
| PM(プロジェクトマネージャー) | 予算・納期・品質・体制・お客さまとの調整を管理する | 100〜160万円 |
| インフラエンジニア | サーバー・ネットワーク・クラウド環境を設計・構築する | 70〜120万円 |
※単価は目安です。地域・会社の規模・担当者の経験によって大きく変わります。
計算例:これまでの見積もりで、どこにお金がかかっていたか
考え方を示すために、仮の例で計算してみます(実際の人数・期間は、作るものによってまったく違います)。半年ほどかけて業務システムを1つ作る、というイメージです。
| 工程・担当 | 人数 × 期間 | 人月 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 企画・構想(ITコンサルタント) | 1人 × 1か月 | 1 | 130〜210万円 |
| 要件定義(上流SE) | 1人 × 1.5か月 | 1.5 | 165〜255万円 |
| 設計(SE) | 2人 × 2か月 | 4 | 320〜480万円 |
| 実装・単体テスト(プログラマー) | 4人 × 3か月 | 12 | 720〜1,200万円 |
| テスト設計・品質確認(QA) | 1人 × 1.5か月 | 1.5 | 75〜120万円 |
| テスト実行(テスター) | 2人 × 1.5か月 | 3 | 150〜210万円 |
| PM(全期間) | 1人 × 6か月 | 6 | 600〜960万円 |
| インフラ構築 | 1人 × 1か月 | 1 | 70〜120万円 |
| 合計 | 30 | 約2,230〜3,560万円 |
この例では、人月の半分以上(30人月のうち16.5人月)、費用でも4割ほどが「実装とテスト」です。人数がいちばん多く、期間もいちばん長いのがこの工程でした。
AI駆動開発で変わったこと:縮む工程・縮まない工程
AI駆動開発で大きく縮むのは、まさにこのいちばん大きかった「実装」の工程です。仕様が決まっていれば、コードを書く作業そのものにはほとんど時間がかからなくなりました。一方、上流の工程はあまり変わりません。
| 工程 | AI駆動開発での変化 | 理由 |
|---|---|---|
| 企画・構想・業務整理 | ほとんど縮まない | お客さまの課題を聞き、そもそも作るべきかを一緒に決める仕事だから |
| 要件定義 | ほとんど縮まない | 業務のルールや例外は、お客さまと話さないと決まらないから |
| 設計 | あまり縮まない | 画面・データ・処理の仕様を決めるのは人の判断。決めた後の書き起こしはAIが手伝える |
| 実装・単体テスト | 大きく縮む | 仕様が決まっていれば、コードを書く時間はほとんどかからない |
| テスト | 縮む(ただしゼロにはならない) | 確認項目やテストコードの準備はAIが手伝える。最後に確かめて責任を持つのは人 |
| PM・調整 | 期間が短くなる分は減る | お客さまとの調整そのものは残る |
「人月」で見積もる意味が薄れてきている
実装に時間がかからなくなると、「何人で何か月かかるか」で見積もる人月計算そのものが合わなくなってきます。実際、AI駆動開発では人月計算ではない見積もりが多くなってきています。
これまでの見積もりは「たくさんの人が長い時間コードを書く」ことが前提でした。その前提がなくなると、費用の中で大きいのは「何を作るかを決める時間」と「作った物を確かめ、直し続ける時間」になります。
これから価値になるのは、要件定義と設計
要件定義と設計が縮まないのは、お客さまとのコミュニケーションが欠かせないからです。業務のどこに困っているのか、どこまでをシステムにするのか、例外のときはどうするのか——これはAIに聞いても決まりません。
作る作業が安くなった分、これからは「何を作るべきかを、お客さまと一緒に決められること」こそが価値になっていくと考えています。AI駆動開発の会社を選ぶときも、「早く安く作れるか」だけでなく、要件定義と設計にきちんと時間をかけてくれるかを見ておくと失敗が減ります。
作って終わりじゃない:作った後にかかる費用
開発費が下がっても、システムは作った後のほうが長く付き合うものです。公開した後には、次のような費用がかかり続けます。
| 作った後にかかるもの | 内容 |
|---|---|
| 保守 | 不具合の修正、OSやライブラリの更新、セキュリティ対応 |
| 改善(ブラッシュアップ) | 使ってみて出てきた要望への対応、機能の追加・見直し |
| インフラ費 | サーバーやクラウドの利用料 |
| AIの利用料 | システムの中にAIの機能を組み込んだ場合、使われた分だけかかる費用(料金は各社の公式情報で確認) |
AI駆動開発では直す・足すコストも下がるので、「最初に完璧なものを作る」より「作ってから使いながら育てる」ほうが合っています。逆にいえば、育てる時間をどう確保するかを最初から考えておく必要があります。
なお、会員登録・ログイン・毎月の課金のようにどのシステムにも要る土台まで自作すると、その分だけ保守の対象が増えます。土台は既にある仕組みを使い、作るのは自社ならではの部分に絞る、という考え方もあります(AIツール・AIアプリを有料化するには?で詳しく解説しています)。
最初の開発費をまとめて出せないとき:ラボ契約で按分する
開発費が下がったとはいえ、最初にまとまった金額を一度に出すのは難しいという会社も多いはずです。そこでおすすめしたいのが、長期のラボ契約を結び、最初の開発費をその月額に按分するという考え方です。
ラボ契約とは
ラボ契約とは、エンジニアの「毎月の作業時間」を、定期契約で買う契約です。決まった成果物を納めてもらう「請負」と違い、毎月決まった時間、エンジニアに自社のために動いてもらう形で、実質的に自社のエンジニアを抱えるのに近くなります。
| 請負(作って納める) | ラボ契約(月の時間を買う) | |
|---|---|---|
| お金の払い方 | 作るものごとに見積もり、まとめて払う | 毎月定額 |
| 作った後の改善 | 別途見積もり | 毎月の時間の中で続けられる |
| 保守 | 別契約になることが多い | 毎月の時間の中で対応できる |
| 向いている場面 | 作るものがはっきり決まっていて、作った後はあまり変えない | 使いながら育てたい・長く付き合いたい |
ラボ契約をおすすめする理由
- ブラッシュアップができる:使ってみて出てきた「ここを直したい」に、毎月の時間の中で対応できます
- 保守もしてもらえる:不具合の修正や更新対応を、別の契約を結ばずに頼めます
- 定額で安心:毎月の支払いが決まっているので、予算が立てやすくなります
- 最初の開発費を按分できる:長く契約する前提なら、最初の開発費を月額に含めて分けて払う形がとれます
AI駆動開発は「作ってから育てる」のと相性がよいので、月の時間を買うラボ契約とも噛み合います。当社でも、このやり方で開発を進めている案件があります。
ラボ契約で気をつけること
- 契約期間と途中解約の条件:最初の開発費を按分している場合、途中でやめたときに残りをどう精算するかを先に決めておく
- 毎月の時間で何をするか:使い切れない月・足りない月の扱い(繰り越せるか、追加できるか)
- 何に時間を使ったかの報告:毎月の作業内容が見える形になっているか
- 優先順位を決める人:自社側で「次に何を直すか」を決める担当を置いておく
よくある質問
AI駆動開発なら、開発費はどのくらい安くなりますか?
作るものによって大きく変わるため、一律には言えません。実装(コーディング)の比重が大きいシステムほど安くなりやすく、業務の整理や要件定義に時間がかかるシステムほど差は小さくなります。見積もりを比べるときは、総額だけでなく工程ごとの内訳を見るのがおすすめです。
人月で見積もらない場合、何をもとに費用が決まりますか?
決まった形はまだなく、会社によってさまざまです。要件定義・設計にかかる時間や作るものの範囲をもとに見積もる方法のほか、作った後も続けて改善していく前提なら、ラボ契約のように「毎月の時間」で買う形も選べます。
AIで作ったシステムは、作った後に誰が直すのですか?
AIで作ったシステムでも、不具合の修正や更新、改善は必要です。開発した会社に保守・改善まで続けて頼めるかを、契約前に確認しておきましょう。ラボ契約なら、保守と改善を同じ契約の中で頼めます。
まとめ
- AI駆動開発で安くなるのは本当。いちばん縮むのは、これまで見積もりの大きな割合を占めていた実装(コーディング)
- 要件定義と設計はほとんど縮まない。お客さまとのコミュニケーションが要るからで、これからはここが価値になる
- コードを書く時間が前提だった人月計算は合わなくなってきている
- 作って終わりではない。保守・改善・インフラ・AIの利用料が作った後もかかる
- 最初の開発費をまとめて出しにくいときは、長期のラボ契約で按分するという方法がある。月の時間を買うので、ブラッシュアップも保守も定額で続けられる
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